教授挨拶


横浜市立大学医学部
放射線治療学教室
主任教授 幡多 政治

放射線治療学教室の設立

横浜市立大学放射線治療学教室は、2018年4月に前身の放射線医学教室から分離独立し、新設されました。これは、高齢化が進む我が国において、がん患者が年々増加していく中、がん治療の三本柱の一つであり、体に負担の少ない放射線治療の需要が増え続けていること、そして、テクノロジーの進歩とともに高度に発展した放射線治療を適切かつ安全に提供するために、高いレベルの専門的な知識と技術を持った放射線治療専門医の育成が強く求められるようになったためです。

最新・最先端の放射線治療

横浜市立大学は、医学部に隣接する福浦地区の本院と浦舟地区にある横浜市民総合医療センターの二つの附属病院を有し、年間の放射線治療患者数の合計は1,300人を超えます。また、県内の放射線治療関連の協力病院はおよそ20施設を数え、神奈川県における放射線治療の中心的役割を担っています。放射線外照射においては、最先端の治療システムを用いて、通常の三次元原体照射(3-dimensional conformal radiation therapy, 3DCRT)は元より、高精度治療の強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy, IMRT)や定位放射線治療(stereotactic radiation therapy, SRT)などを積極的に行っており、その適用の幅を広げています。小線源治療では、子宮頸がんを中心にIr-192を使った高線量率の治療と、低線量率においては、県内でも実施施設が限られるI-125密封小線源永久挿入療法を前立腺がんに行っており、この治療患者数は全国で三本の指に入ります。さらに、近年、ラジオアイソトープを用いた内用療法が注目されるようになり、国内初となる治験を大学で行うとともに、様々な核種が保険診療で使用できるよう製薬企業と協同で研究を進めています。

研修環境の整備

このように、現代の放射線治療は、高度に専門化すると同時に多様化が進んでいます。高い専門性と豊富な知識や技術なくして、最適な放射線治療を選択・提供できなくなっています。そのため、卒前・卒後教育に力を入れ、研修医、専攻医の先生方には、放射線治療について幅広く理解が得られ、実践できるよう、経験豊かな放射線治療専門医の指導による研修プログラムが整備されています。また、協力病院に、粒子線治療装置や高精度治療専用機を導入している施設を持ち、各施設を順番にローテーションすることによって、放射線治療を網羅的に学ぶことができるのも当大学の魅力の一つです。がんの集学的治療として行われる手術や薬物療法の知識も、放射線治療を行う上で欠かせません。最近は薬物療法の中でも、特に分子標的薬や免疫関連の薬剤が次々に開発され、臨床で用いられるようになっています。各診療科と緊密に連携を取り合い、カンファランスやキャンサーボードなどを通して様々ながん腫の治療法を横断的に学べるよう環境が整えられています。大学院に進学される方は、がん専門医療人の養成を目的とした文部科学省のがんプロフェッショナル養成基盤推進プランの支援の下、通常の臨床業務を行いながら研究活動が可能なため、生活費を心配することなく診療と研究に打ち込むことができます。

臨床研究とトランスレーショナルリサーチ

当教室では、臨床研究を中心に新しい治療法の開発を進めています。特に、最先端の治療システムを用いた臨床試験や治験を積極的に行っています。放射線治療の分野では、技術革新の恩恵が極めて大きく、ひと昔前には考えられなかった高度な治療が行えるようになり、様々ながんで治療成績を向上させつつあります。放射線治療もエビデンスが重視されるようになり、よく練られた試験デザインに則って、信頼性の高いデータが得られるよう日々研究が行われています。また、当大学の附属病院は、全国的にみても希少がんが多いのが特徴の一つです。これは、他施設に比べて希少がんの専門家が多く、当施設で治療を希望される方が集中するためですが、希少がんはその希少さ故に、治療法が確立していないのが現状です。そのため、それら疾患に対する最適な治療法の考案ならびに標準化を進めており、当大学の治療成績を基に、全国の診療ガイドラインが作成された疾患も少なくありません。さらに、放射線治療システムや内用療法薬などの開発・改良を関連企業と協同で行っており、基礎から臨床へ応用可能な研究も盛んに進められています。

研修・勤務をお考えの方へ

我々は職場環境の改善にも努めています。医療従事者の過重労働が問題視される昨今、働き方改革を積極的に推進しています。勤務時間内は、個々がプロ意識を持って真摯に仕事をする一方、休みは計画的にきちんと取って、充実した毎日を送ることが恒常的に良い医療を提供することに繋がると考えています。また、当教室は神奈川県内の広い範囲に多くの協力病院を有するため、各人が抱える家庭の状況に応じた研修・勤務先をご提案できるのも良いところだと思います。そして、明るく魅力的な職場を皆様と共に作って参りましょう!


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